質問:
MDK-Armツールチェーンではシングルユーザライセンスとフローティングライセンスにどのような違いがありますか?
回答:
シングルユーザライセンスとフローティングライセンスはそれぞれ2種類の形態が存在します。
シングルユーザライセンスはノードロックライセンスです。
- "Single"ライセンス:1ユーザで最大2台のPCまでLIC(License ID Code)を生成可能
- "Single Dongle"ライセンス:複数ユーザがLICを個別に生成し(最大10個までLICの生成が可能)、ドングルキーをPCに挿しているユーザだけが使用可能
の2種類があります。
フローティングライセンスはライセンスサーバを必要とします。
- "Flex Floating"ライセンス:ライセンスサーバマネージャー(lmgrd.exe)とベンダデーモン(armlmd.exe)がサーバ上で実行され、クライアントと通信してライセンス情報を取得
- "Floating"ライセンス:サーバ上の暗号化されたファイル(FLF)に対してクライアントが自動的に読み取りと書き込みを行う
注意:"Floating"ライセンスはMDK-Armでは非推奨となり、現在この製品の新規販売はされていません。
これら個々のライセンスの違いの詳細を以下に示します。
"Single"および"Single Dongle"ライセンスはセットアップが最も簡単ですが、ライセンスIDコード(LIC)によって個々のマシンに制限されます。
また、通常の"Single"と"Single Dongle"では前者は1シリアルに対し1ユーザしか使用できませんが、後者はドングルキーを挿しかえることで複数のユーザで1シリアルを共有できます。
"Flex Floating"ライセンスの製品は"Floating"ライセンスより高度な機能(例:特定のユーザやグループ、マシンに優先的にライセンスを確保するなど)を備えていますが、ライセンスサーバデーモンを起動して使用するため、より多くのサーバーリソースと管理についての手順の習得が必要です。
"Floating"ライセンスはFLFベースで動作する基本的なフローティングライセンス機能セットで、習得が容易です。この製品では、クライアントマシンにLICを使用します。
フローティングライセンスではユーザがコンパイル、リンク、デバッグ、またはfromelfユーティリティを呼び出すたびにシートが取得されます。
これらのアクションが完了すると、シートはライセンスプールに戻されます。
フローティングライセンス製品におけるシート数は、これらのアクションを同時に実行できるユーザの最大数を表します。
次の表は、4つのライセンスタイプのさまざまな機能とユースケースについての差分です。
機能 | Single | Single Dongle | Flex Floating | Floating |
使用可能なバージョン | MDK v2.50以降 | MDK v4.60以降 | MDK v4.60以降 | MDK v2.50以降 |
クライアント設定にかかる時間(*1) | 短い | 短い | 短い | 普通 |
サーバ設定にかかる時間 | なし(*2) | なし(*2) | 普通 | 短い |
1台以上のPCでの使用 | 可(*3) | 可(*3) | N/A | N/A |
購入時最小シート数 | N/A | N/A | N/A | 2 (*4参照) |
ライセンス問題のデバッグ(*5) | 単純 | 単純 | 複雑 | 単純 |
ライセンスのサーバ変更 | N/A | N/A | Rehost | Keilに依頼 |
複数のライセンスを1台のPCに登録 | LICの再利用(*6) | LICの再利用(*6) | 可 | N/A |
同一のPCに複数のアカウントのライセンスを登録(*7) | 可 | 可 | 可 | 不可 |
ライセンスの他メンバーへの移管 | 可 | 可(ほぼ不要) | 不要 | 不要 |
ライセンス更新手続きに伴う手間(*8) | 小 | 小 | 中 | 大 |
ホスト変更(*9) | N/A | N/A | 可 | 可 |
ライセンスチェックアウト/チェックイン | N/A | N/A | 可 | 可 |
ライセンスチェックアウト無効化 | N/A | N/A | 可(*10) | 不可 |
ライセンス使用中のユーザダイアログ | N/A | N/A | 可 | 可 |
特定のユーザやPCのライセンス優先使用(*11) | N/A | N/A | 可 | 不可 |
同一サーバへのライセンスのマージ(*12) | N/A | N/A | 可 | 不可 |
高負荷ネットワークでのライセンス認証への影響(*13) | N/A | N/A | 大 | 小 |
3台のリダンダントサーバ | N/A | N/A | 可 | 不可 |
ライセンスサーバのグローバル使用(*14) | N/A | N/A | 可(オプション) | 不可 |
注釈:
- FLFベースのシングルユーザライセンスでは、電子メールでサーバマシンに対するLicense ID Codeを1つ受け取ります。"Flex Floating"ライセンスクライアントのセットアップは簡単で、基本的にすべてのクライアントで同じ設定となります。ライセンスの設定方法の順を追った方法については、ライセンス管理のWebページを参照してください。
- 「N/A」は「該当せず」の意味です。
- 各シングルユーザー製品では、1人で最大2台のマシンにツールをインストールして使用できます。
- 弊社の営業窓口にお問い合わせください。
- "Floating"ライセンスまたはシングルユーザライセンス製品は、"File" → "License Management"ダイアログからオンラインフォームを送信するとき、あるいはビルド中に、明確なエラーコードを表示します。これらのエラーコードは独自のものですが、ユーザはこのような問題に多くの経験を持つサポートにコンタクトをとる事ができます。サポートスタッフは、問題に関する詳細情報の収集のためFLFファイルを要求する場合があります。"Flex Floating"ライセンスでは、サーバ上で実行されるプログラムを使用するため、ネットワークの構成により依存する可能性があります。より多くの機能の利点を持つ反面、管理の複雑さやいくつかのセキュリティハードルをもたらします。最も一般的なFlex Floatingライセンスセットアップの問題を解決するのに役立つ2つのwebページを次に示します。
問題が解決しない場合は、弊社サポートに連絡してください。エラーメッセージを含め、戦術のトラブルシューティングを行っての状況をお知らせください。 - シングルユーザーライセンスで同じマシンに2つの異なるバージョンのMDK-Armを同時にインストールして使用するには、UVISION: Using Different Versions of the Keil IDE On the Same Computerを参照してください。メンテナンスフェーズのプロジェクト管理に役立ちます。
- これが、"Flex Floating"ライセンスがArm University Programを通じて提供される理由の1つです。教育機関では、同じグループのマシンを使用する多くの学生に対して複数のクラスが開かれているため、Flexフローティングライセンスが理想的です。
- シングルユーザライセンスの場合、ライセンスのRenewal後にライセンスを更新または移行するのは、単純な2段階の手順のみ必要です。
フローティングタイプの場合はいずれもRenewal後にはライセンスファイルの再生成が必要です。
"Flex Floating"の場合、Renewal後もPSNは同じです。ライセンスサーバのIP/名前とポートに変わりがない場合、クライアントPCはライセンスに関する再設定を必要としません。
ただし、"Floating"の場合は、PSNが更新されますので新しくFLFを生成し、各クライアントPCで個別にライセンスに関する設定が必要です。以下を参考にしていただけます。
- Flex Floating"のRenewalの手順は、ライセンスユーザーガイドに詳細な手順について記載があります。
- LICENSE: Updating a Floating License File (FLF) 注:FLFファイルをクライアントと同じPCに保存することは許可されていません。FLFファイルは必ずネットワークドライブに保存しなければなりません。
- "Flex Floating"の場合ホスト変更は無料です。以下のライセンス発行に関してのページより、Arm KEIL 製ソフトウェアツールのFlexLM Floting License版(v4.60以降対応)のドキュメント内にあるライセンスのホストマシン変更(リホスト)の項目をご確認ください。
"Floating"のFLFライセンスのホスト変更も無料ですが、新しい製品のシリアル番号が必要となります。弊社の営業窓口にお問い合わせください。 - 詳細については、次のナレッジベースの記事LICENSE: Preventing Manual Checkout of a FlexNet Licenseを参照してください。一度設定を行っていただくとライセンスはクライアントがサーバに接続されている場合のみ使用できるようになります。
- ライセンスサーバでオプションファイルを利用することで可能となります。以下のFAQのエントリを参考にしてください。
- 以下のライセンス発行に関して ( LIC-A-26 のページより、Arm KEIL 製ソフトウェアツールのFlexLM Floting License版(v4.60以降対応)のドキュメント内にある複数ライセンスのマージの項目をご確認ください。
- 他の多くのサーバプロセスが実行中、ライセンスの要求が多い、トラフィックが多いあるいは待ち時間が長いネットワークの環境が最悪のシナリオとなります。ワイドエリアネットワークや仮想環境などの特定の環境を含むことは可能ですがこれら2つの環境は公式にはサポートされていません。このような極端な環境下では、"Floating"環境でのビルド時間が"Flex Floating"のビルド時間よりも短いケースがあります。
コンパイラのUser Guideには、一般的にビルド時間を改善する方法に関する記述が含まれています。 - お使いのバージョンの End User License Agreementをご覧ください。v5.26以下のバージョンではリモート環境での使用については購入元の社員のみが許されています。ライセンスの「チェックアウト」機能により、両方のフローティングライセンスタイプでグローバルなリモートでの使用が許可されています。
ただし"Floating"ライセンスの場合、クライアントがサーバーに直接ライセンスを要求するとタイミング情報がチェックされるため、タイムゾーンが異なるとすべてのクライアントが正常に動作できなくなります。
"Flex Floating"ライセンスはグローバルライセンスの場合国外にあるサーバも使用できます。このオプションについては、弊社の営業窓口にお問い合わせください。
WANは公式にはサポートされておらず、一般的にローカルサーバと比較してビルド時間が長くなることをご承知おきください。
Arm-Keilによってリリースされる他のツールチェイン(C51、C166、およびC251)は、シングルユーザまたは"Floating"ライセンスのみを提供します。
"Flex Floating"ライセンスは、MDK-Armツールチェインでのみ使用できます。